太陽光が通りを温かく包み込み、空気もポーの孤児院へと向かう少年の心のように澄んでいる。ドリアン（命名は院長のポー）は生まれた時に両親に捨てられたが、それでも幸せに育っていた。孤児院の世話係を手伝い、院の秩序を守り、大抵は優しく聡明な存在であった。

そして月日は流れ...ドリアンは背の高いハンサムな青年に育った。カーリーな茶色の髪がたくましい肩まで伸びていた。だが、子供の頃の明るさが消え、陰気な振る舞いが目立つようになった。彼はそろそろ孤児院を出ていかなければいけない。大人として生きなければいけない現実に直面するのが怖かった。どうやって生活費を稼げばいいのだろうか？住む場所を確保して腹を満たすにはどうしたらいいのだろうか？ドリアンはうまくやっていく自信がなかった。さらに困ったことに、彼はポーの娘のアガサに恋をしていた。2 人は相思相愛で、心の底からお互いを気にかけていたが、彼は愛する人に絹や金を贈れる術を持たない自分を不がなく思っていた。

ドリアンはそんな暗いことばかりを考えていたため、通りを歩いていても、カラフルな店の看板や窓が全く目に入っていなかった。突然、窓越しに陳列されたものが目に飛び込んできた。上品なプラチナの飾りにあしらわれた美しい真紅の宝石だ。彼はそれに磁石かのように惹きつけられた。数か月後、ドリアンは誰にも尾行されていないことを確かめながら、裏路地をうろついていた。そのジャケットのポケットにはアミュレットが入っている。

「このペンダントをアガサに渡せば、僕をもっと愛してくれるだろう！」と彼は思った。その時、突然アミュレットが重くなったことに気づいた。その重みでジャケットが下に引っ張られていた。彼はそれを手でつかんだ。そして、それを誰かにあげることはできないとふと思った。突然、鋭い痛みを感じ、ドリアンはポケットから手を出した。指の間から血が流れている。しかし、それを見ても彼は全く動揺しなかった。謎の衝動に駆られ、彼は路地の陰の中に身を潜めて、そばを通りかかった 1 人の人間にそのアミュレットをかざした。男は息をのみ、うめき声を上げて、ぐったりと地面に倒れた。ドリアンはこれまで抱えていた不安の解消法を見つけたことに気づいた。自分のニーズも欲望も、これならすべて容易に満たすことができる。バラ色の人生になるだろう。

1 年のうちに、彼は駆け出しのメイジながらも、40 エーカーの土地を所有するまでになった。その中心には威圧感のある城がそびえ立っている。前の所有者は不明の状況下で、死ぬ直前にドリアンにすべての相続権を与えた。城の召使いは、反抗した同僚が無残にも命を奪われるのを目撃してから、疑問も不平も持つことなく新しい強力な主に従っている。ドリアンはアガサや孤児院のことなどすっかり忘れ、血の呼び声にだけ耳を傾けていた。しかし、優雅な生活をしているにも関わらず、血のメイジは自分自身の主となることはできていなかった。毎日、アミュレットが彼に城を出て残虐行為をし、幾人もの人間に計り知れない苦しみをもたらすように命令した。ドリアンはその悪意に満ちた宝石の命令に従うほかなかった。帝国の辺境地方で、彼は何のお咎めもなくその残虐行為を実行した。未亡人と孤児の数は増していくばかりだった。青年の目は、かつて見せていた輝きが消え、生気のない人形の目に変わっていた。彼は己の服従に憤慨する奴隷のようだった。この青年は本当に、孤児院で看護師にこっそり近づき、スカートを引き下げるイタズラをし、床で笑い転げていたあのドリアンなのだろうか？

ある日、ようやくドリアンはこの生活にケリを着ける覚悟を決めた。彼は残された力を振り絞り、アミュレットに挑戦した。手のひらから血が滴り始めるほど、石を強く握った。それに反応して、アーティファクトは目を覚まし、要求するように、懇願するように彼を呼んだ。石との対決は激しさを増し、メイジの目に燃え盛る炎が現れた。彼の心は苦しみで叫び、その体には耐えがたい痛みが走った。そんな状態がどれくらい続いただろうか？ドリアンには何時間という長い時間に感じられた。彼は出血多量で意識を失いかけていたが、アミュレットには降伏する様子がまったくなかった。最後の苦肉の策として、彼はアミュレットを自分の胸に当て、ナイフを手に取って宝石と己の心臓を突き刺した。クリスタルが幾千もの真紅の欠片となって床に散らばり、彼の体から流れた血で染まった。ドリアンは忘却の縁へと沈んでいく中、アミュレットの己に対する支配力が弱まっていくのを感じた。

数日後、彼は目を覚ました。怪我もなく、生きている。宝石も、彼の血を糧にしながら元通りになっていた。あの一件をきっかけに、この 2 つの魂は絡み合うようになった。ドリアンは元の性格に戻り、目はかつての光と優しさで輝いていた。しかし、彼は自分がもたらした苦痛のことを考えると心が重くなった。その罪をどうにかして償わなければと思った。そして、彼は守護者たちの元へ行き、すべてを告白して、彼らの判断に身を委ねることにした。ヒーローたちは彼が本当に改心したことを確信し、その血の魔法を大義のために使う許可を与えた。